そろそろ法人化を考えないといけないのかよくわからない…
こんな疑問に答えます。
この記事の内容は以下の通り
- 法人化のメリット
- 法人化のデメリット
- 法人化を考える時期
法人化はメリットもあればデメリットもあります。
儲かり始めているのに法人化を検討しなければ、余計に税金を払っていたなんてことも。
法人化のメリット
法人のメリットはこんな感じ。人によって活用できるものもあれば出来ないものもあります。
- 所得税と法人税の税率、計算構造の違い
- 役員報酬で給与所得にする
- 家族を従業員に
- 生命保険に加入した場合の違い
- 自宅(借家)を社宅にした場合
- 出張手当
- 慶弔見舞金
- 退職金
- 欠損金の繰越控除の活用
- 決算期の変更ができる
列挙しただけでもたくさんありますね;一つずつ説明します。
所得税と法人税の税率、計算構造の違い
所得税と法人税は税率や計算構造が違います。
ですので同じだけ稼いでも計算結果が違ってきます。
一般的には儲けが少ないと所得税のほうが有利、稼げば稼ぐほど法人税のほうが有利になっていきます。
なぜそうなるか、税率と計算構造に答えがあります。
所得税の税率、計算構造
まず個人事業主の税金は法人税以外にも次のとおりいろいろあります。
- 所得税
- 住民税(市・県)
- 事業税
この他、消費税や固定資産税、事業所税など税金はありますが、法人個人どちらも同じですので省略します。
以下順番に説明します。
所得税の税率
所得税の税率は以下のとおり。
課税所得(A) | 税額の速算式 |
195万円以下 | A×15% |
195万円超 330万円以下 | A×20%−97,500円 |
330万円超 695万円以下 | A×30%−427,500円 |
695万円超 900万円以下 | A×33%−636,000円 |
900万円超 1,800万円以下 | A×43%−1,536,000円 |
1,800万円超 4,000万円以下 | A×50%−2,796,000円 |
4,000万円超 | A×55%−4,796,000円 |
住民税の税率
住民税は所得税と概ね同じ所得に対して一律10%の税率をかけて計算します。
事業税の税率
事業税は事業所得から290万円を控除した金額に5%(業種によっては3%や4%)で計算します。
法人税の税率、計算構造
一方法人も法人税以外にもいろいろありますが次のとおり。
- 法人税
- 地方法人税
- 事業税
- 地方法人特別税
- 住民税(市・県)
以下順番に説明します。
資本金1億円以下の中小法人を前提としています。
法人税
法人税は所得税と違って基本的には利益に定率23.2%をかけて計算します。
地方法人税
地方法人税は法人税に4.4%かけて計算します。
事業税
事業税は法人税の課税所得(利益)に対して税率をかけて計算します。
税率は次のとおり。
年400万円以下の所得 | 3.4% |
年400万円超 800万円以下の所得 | 5.1% |
800万円超 | 6.7% |
地方法人特別税
地方法人特別税は事業税に対して43.2%の税率をかけて計算します。
住民税(市・県)
法人住民税は都道府県に支払う分と市町村に支払う分があります。
それぞれに法人税割と均等割があります。
法人税割は法人税に税率をかけて計算します。
均等割は従業員数と資本金等の額に応じて決められた額になります。
法人税割は都道府県・市町村いずれも法人税に対して、都道府県が標準税率3.2%、市町村が標準税率9.7%をかけて計算します。
役員報酬で給与所得に
役員報酬で給与所得にするとなぜお得なのか、その答えは給与所得には給与所得控除という控除があるからです。
家族を従業員に
家族を従業員にしてどこにメリットがあるのか、その答えは給与が経費になるからです。
欠損金の繰越控除の活用
欠損金とは赤字のことです。
個人事業主の場合は、赤字になったら青色申告で確定申告をしていると3年間は赤字を繰り越せます。
例えば去年は200万円赤字だったけど、今年は300万円の黒字だったら、去年の200万円と今年の300万円を相殺して100万円で税金の計算をします。
法人の場合も同様にこの赤字を10年間繰越することが出来ます。
個人事業主の3年と比べて法人は10年繰り越せるので使い切れないなんてことはないかと思います。
決算期の変更ができる
税額が安くなるというわけではありませんが、法人は決算期を自由に変更することが出来ます。
決算期を自由に変えることができるメリットとしては、繁忙期と決算期をかぶらないようにできることであったり、繁忙期を事業年度の前半に持ってくることで期の後半は見通しが立てやすく税対策もしやすくなったりすることです。
決算期の変更の手続きは定款の変更を行うことによって出来ます。
信用力が上がる
会社形態にした方が信用力が上がると一般的には言われています。
会社としてやっているということは事業として事務所を借りて従業員を雇ってっていうイメージがあるからでしょうか。
法人のお金と個人のお金が区分されて法人としての決算書を作成するので怪しい金の動きは作りにくくなります。
社長と法人の間でお金の貸し借りをしていて決算書に社長借入金などが上がっていると信用が下がってしまうので注意です。
従業員を採用しやすくなる
従業員が採用しやすくなるというのも一般的には言われます。
これは当事者になればわかるかと思いますが、就職活動で個人でやってるよりも「株式会社○○」というふうに会社でやっていたほうがなんとなく安心できますよね。
法人化のデメリット
法人化のデメリットはこんな感じ
- 設立手続き、設立費用がかかる
- 税理士費用
- 赤字でも住民税均等割がかかる
- 役員報酬は期中に自由に変えることが出来ない
- 交際費は800万円まで
- 社会保険の加入義務
設立手続き、設立費用がかかる
当然会社を作るということなので、設立費用がかかります。
設立費用は株式会社なら20万円〜、合同会社なら6万円〜が一般的です。
これ以外に会社の資産となる資本金を拠出する必要があるので、資本金にするための資金も必要です。
税理士費用
法人税は、所得税と違ってしくみが複雑です。
所得税の確定申告よりも提出する書類が多く手間がかかるので税理士に確定申告を依頼するのが一般的です。
自分で法人の決算・確定申告が出来なくはないので、時間がある社長は自分でやってみてもいいかもしれません。
赤字でも住民税均等割がかかる
法人は赤字でも住民税の均等割という税金がかかります。
均等割というのは、そこに会社が存在していれば儲けにかかわらず支払うべき税金になります。
都道府県と市町村に従業員数と資本金等の額に応じて決められた金額を支払います。
県や市によって税額が若干異なります。
個人の場合も均等割はあるのですが、法人化すると法人の均等割を支払い、かつ、社長は個人の住民税の均等割支払うので、法人の均等割分が純粋に追加になります。
役員報酬は期中に自由に変えることが出来ない
税金の世界では役員報酬が経費として認められる要件が細かく決まっています。
要件を満たさない形で支給した役員報酬は経費にならないのです。
役員報酬が経費として認められるための要件をざっくり説明すると毎月同額を支給していることです。
途中で勝手に役員報酬を増額しても増額分は経費にはならないので注意です。
交際費は800万円まで
また、法人は交際費についても要件があります。
中小企業者である法人であれば、交際費は年間800万円までは経費として認められるのですが、これを超えると経費として認められませんので注意です。
この点、個人の場合は800万円という要件はありません。
社会保険の加入義務
個人事業主の場合は、国民健康保険料と国民年金保険料を納付します。
法人を設立して、役員報酬を受け取る場合には、社会保険に加入して社会保険料を支払うことになります。
一般的には、協会けんぽに加入して健康保険料と厚生年金保険料を支払うことになります。
協会けんぽに加入した場合の保険料はざっくり給与の25%程度で一般的には社会保険料のほうが多くなると言われています。
法人化を考える時期
法人化を考え出すタイミングは以下のタイミングがポイントかなと。
- 消費税の納税義務者になるタイミング
- 法人税のほうが所得税より低くなるタイミング
このいずれか、もしくは両方を考慮して決めるのがいいです。
消費税の納税義務者になるタイミング
消費税は年間の売上が1,000万円までの個人事業主には課税されません。
課税売上が1,000万円を超えた年の翌々年から消費税の納税義務が発生します。
法人についても同様に年間の売上が1,000万円を超えた翌々事業年度から消費税の納税義務が発生します。
ただし、法人は個人時代の売上高は引き継がないので、法人になれば基本的には1期目、2期目については消費税がかかってこないことになります。
個人事業主で2年やって次の年から消費税を支払わなければならない、というタイミングで法人になれば法人1期と法人2期は基本的には免税なのでさらに2年間消費税の支払いを引き伸ばすことができるのです。
法人税のほうが所得税より低くなるタイミング
もう1つは法人税のほうが所得税よりも安くなるタイミング。
全く同じ儲けで法人にした場合に支払う税金が結果として安くなる場合にはすぐにでも法人にした方がいいです。
具体的に法人化を検討し始める所得のラインとしては400万円を超えてきたあたりからになります。