消費税のかかる会社(事業者)って?

はじめに

日常生活において当然のように商品の購入とともに支払いをする消費税。

それではこの会社や個人事業主、フリーランスといった事業を行う者(以下、事業者。)のうち消費税を納める必要のある者と必要のない者がいることはご存じだろうか。

ここでは消費税を納める必要のあるもの、納税義務者について解説をしていきたいと思う。

そもそも消費税とは

  1. 消費税創設の趣旨

    消費税とはものの消費に対して課税をすることによって税制全体の公平性を保つことを趣旨として創設されました。
    それと同時に高齢化社会に伴う社会福祉財源の確保という側面も持っております。
    所得税や法人税のみだと現役世代の引退後に租税の確保が難しくなる可能性を考慮して、国民全員に同率の税額を課することで日本社会の将来に備えることが消費税の趣旨となります。
  2. 消費税の性質について(間接税)

    消費税とは代表的な間接税となります。
    直接税の代表である法人税や所得税などは所得を得た本人が納めることから「直接税」と分類されます。
    一方で消費税は最終消費者が払った消費税を事業者が一度預かり、その預かった消費税を国に納付します。
    税金を支払う本人の代わりに納めていることから、間接税と区分がされております。

消費税のかかる会社~原則的な判定~

  1. 納税義務者に関する説明

    前述の通り消費税とは間接税のため、消費税の納税義務者とは「消費者から消費税を預かった者」となります。
    法律用語にて記述すると下記の通りです。
    事業者は、国内において行った課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、この法律により、消費税を納める義務がある。」

    つまり物を売った場合やサービスを提供した場合にそれに係る消費税を納める必要があります。
    特定課税仕入れや保税地域からの引き取りに関しては該当者が限られるため割愛。

    ただし、基準期間における課税売上高が1,000万円以下の場合は納税義務が免除されます

    このように消費税とは原則として消費者から消費税を預かった者すべてが納税義務を負うが、一定の小規模事業者の場合はその消費税を国に納めることを免除するという段階的な考え方となります。

  2. 基準期間の説明

    基準期間とは会社であれば前々事業年度、個人の場合は前々年のことを指します。

     

    事業年度(本年)

    基準期間(左記の2年前)

    法人の場合

    令和24月~令和34月まで

    平成304月~平成314月まで

    個人の場合

    令和21月~令和2年12月まで

    平成301月~令和2年12月まで

  3. 課税売上高の説明

    これについては消費税の課税される取引に係る売上高の合計額をいいます。
    一般的に国内で行う商取引に係る売上高がこれに該当します。

  4. 特定期間による判定

    上記のように2事業年度前の課税売上高が1,000万円以下か否かにより消費税の納税義務者であるか否かが判定されます。
    ただし、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合若しくはその期間の給与等の支払い高が1,000万円を超える場合は納税義務者となります。

    特定期間とは前年(全事業年度)となります。
    判定に使う事項は課税売上高と給与いずれかを電卓可能です。

消費税のかかる会社~特殊な判定~

ここまでは「基準期間における課税売上高」による判定を行ってきましたがもし基準期間がない場合、つまりは設立初年度若しくは2年目である場合の取り扱いについて触れていきたいと思います。

  1. 基準期間がない場合の取り扱いに関して

    基準期間がない場合は原則として免税事業者に該当します。
    つまり消費税を納める必要が生じないこととなります。
    ただし、基準期間がない場合でも特定の事由に該当した場合は消費税の納税義務者となります。

    ちなみに、設立初年度が6か月しかない場合3年目における基準期間における課税売上高の計算方法は12か月分に換算した金額で判定されます。
    つまり、1期目における6か月分の課税売上高が600万円の場合、3期目における基準期間における課税売上高の金額は600万円を12か月分に換算し直した1,200万円となります。
    1,000万円を超えているため3期目においては当然納税義務者となります。

  2. 資本金による判定

    基準期間がない場合であっても設立当初の資本金の額に応じて消費税の納税義務者となる場合がございます。
    こちらについてはずばり、資本金の額が1,000万円以上の場合は納税義務が免除されません。

  3. 特定新規設立法人による判定

    資本金は1,000万円未満、かつ、基準期間がない場合でも納税義務者となる可能性はございます。
    それがこの特定新規設立法人に該当する場合です。
    下記2項目に該当する場合は当該法人に該当し、消費税の納税義務が生じます。
  • 特定の者に50%以上の株式を保有されていること
  • その特定の者が新規設立法人の基準期間に相当する期間における課税売上高が5億円を超えていること

    要約すると、それなりに規模のある会社が免税事業者である子会社を設立して消費税の受け皿を作ることを禁止した法律となります。

    自身が社長であり株主でもある場合は関係のない規定となりますのでここについては将来子会社を設立したりする時まで頭の隅においていれば問題ないです。

あえて消費税のかかる会社になることを選択する方法

ここまでは消費税の納税義務者及び納税義務の免除を受けられる者について説明をしてまいりました。
これらの特徴は課税売上高や資本金の額が一定の金額に達していれば自動で適用される規定となっておりました。
次は反対に免税事業者であるにも関わらず消費税の納税義務者になる方法について解説をしていきます。

  1. 課税事業者選択届出に関して

    前述の通り消費税に関しては納税義務者・免税事業者ともに強制的に用される規定となっております。
    ここで問題となるのは免税事業者に関しては納税義務がないため申告を行えないという点になります。
    申告に関しては当然還付申告も含まれるため、消費税を払いすぎて還付を受けたくとも免税事業者のため還付申告が行えないという弊害がございます。
    そこであえて納税義務者であることを選択して申告を可能にする制度が「消費税の課税事業者選択届出」の提出となります。

    こちらの届出書を提出期限内に税務署に届出ることによって免税事業者も納税義務者となることが可能となります。

  2. 提出期限

    提出期限についてはその適用を受けようとする課税期間の初日の前日までとなります。
    基準期間が2年前の課税売上によって判定がされるため、納税義務の生じる前年の末日までに提出するという事になります。

    【例】令和241日~令和3331日から納税義務者となる場合

       提出期限は令和2331日となる。(令和241日の前日)

  3. 効力の注意点

    ただし、当該届出書については大きな制限がございます。
    それは一度提出をした場合、取下げを行わない限り効力が続くという点にあります。
    そのため将来的に基準期間における課税売上高が1,000万円以下になったとしてもこの届出書の効力により納税義務が続くこととなります。

    また、一度提出をした場合2事業年度の間は取下げが出来なくなる点も注意しましょう。
    今年は納税義務者、来年は取り下げて免税事業者という方法は取れません。

    そこで次は当該届出書を取り下げる手続きについて触れていきたいと思います。

消費税課税事業者選択不適用届出書

こちらについては前述の届出書の取下げに関する手続きとなります。
提出期限と提出可能となる時期について説明いたします。

  1. 不適用届出書の提出期限

    免税事業者に戻ろうとする課税期間の初日の前日までとなります。
    ここについては課税事業者選択届出と同じとなります。

  2. 提出可能な期間

    前述の通り一度課税事業者となることを選択した場合、2年間は取下げが行えません。
    ただし、この2年間の考え方が非常に重要となります。
    ここの考え方を誤ると1年間免税事業者になることが遅れることとなります。

    厳密は提出可能となる時期については「消費税課税事業者選択届出書を提出して課税事業者となった課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後」となっております。
    非常に分かりにくい表現のため具体例をもって説明いたします。

【具体例】

前提

令和2年4月1日以降の事業年から課税事業者となるため課税事業者選択届出を提出する場合

課税事業者選択届出の提出期限

令和2年3月31日が期限

提出期限についてはその適用を受けようとする課税期間の初日の前日

課税事業者選択不適用届出の提出可能な時期

令和3年4月1日~令和4年3月31日

(消費税課税事業者選択届出書を提出して課税事業者となった課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後)

ポイント

  • 課税事業者となった課税期間の初日=令和241
  • その日か2年を経過する日=令和4年3月31
    (経過する日のため令和2年4月1日+2年の前日)
  • その2年を経過する日の属する課税期間の初日=令和341

終わりに

このように消費税に関しては原則として商取引を行うすべての者、最終消費者から消費税を預かった者すべてが納税義務者となります。

ただし、そのうえで一定の小規模事業者に対して免税措置を設けるという仕組みとなっております。

免税になるか否かによって資金繰りにへの影響が大きいため、自身の立ち位置がどのようになっているのか今一度調べましょう。